個人的本屋大賞ランキング ー第7位~4位ー
皆さんこんにちは!
本屋大賞発表までもうすぐですね。
私は今年のノミネート作は大賞発表までに7作読むことができました。(3作は間に合わず…)
今回は読了した7作の超独断・個人的本屋大賞ランキングを発表しようと思います。
読了した作品は…
・伊吹有喜著「犬がいた季節」
・青山美智子著「お探し物は図書室まで」
・宇佐美りん著「推し、燃ゆ」
・加藤シゲアキ著「オルタネート」
・凪良ゆう著「滅びの前のシャングリラ」
・町田そのこ著「52ヘルツのクジラたち」
・深緑野分著「この本を盗む者は」
この中から、個人的ランキング・本屋大賞の予想をしようと思います!
今回の記事では量も多くなるので、第7位~4位を発表させていただきます。
あくまでも個人的感想な点はご了承ください。また、各作品の詳細な感想は過去に書評記事を上げていますので、そちらを参照していただけると幸いです。
早速ランキングに入ろうと思います!!
第7位は…
宇佐美りん著「推し、燃ゆ」
この作品は芥川賞受賞ということもあり、すごく話題になりましたね。
私個人的には、芥川賞作品特有の読みにくさは感じられず、すごくライトに読めた作品でした。
ただ、表現が独特な箇所も数か所あり、物語に没入することがあまりできないまま読了してしまいました。私には難しかった……。
第6位は…
深緑野分著「この本を盗む者は」
最初、ノミネート作品一覧でこの本を知ったときはゴリゴリのミステリー作品だろう…と思っていました。
あまりミステリー作品が得意でないので、この作品は読むのをやめておこうと思っていたのですが…。皆さんのレビューをみて、ファンタジー作品ということを知り、すぐに買いに行きました(笑)
久しぶりのファンタジー作品だったので、読み始めてから半分くらいまでは物語の世界観に置いてけぼりな感じを味わいました…汗
しかし、中盤から後半にかけては読む手が止まらず、物語の世界観に没入するファンタジーの面白みが凝縮されていました。
これは読み手により、読後の感想が異なるだろうなと思います。
第5位は…
凪良ゆう著「滅びの前のシャングリラ」
前年、「流浪の月」で本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの作品です!
地球に隕石が衝突する日本が設定となかなかぶっ飛んだ設定だなと感じたのが最初の印象です。
隕石が衝突する直前の人間の細かな感情の表現が、さすが凪良ゆうさん!!
リアリティ溢れる心情を描かれており、本当に地球が滅亡すると日本は作中のようにパニックに陥っていくのだとハラハラしました。
第4位は…
町田そのこ著「52ヘルツのクジラたち」
本屋大賞1位になると噂が多いこの作品が個人的には4位!!
孤独の中に生きる主人公と少年の話が中心なのですが、すごく暗い展開で進んでいきます…。その中に数少ない友人たちの優しさは心に刺さりました。
前年に本屋大賞を受賞した「流浪の月」と雰囲気やジャンルは似ているなと思います。
今回は7~4位の作品を発表させていただきました。
次の記事ではベスト3を発表させて頂こうと思います!!
この本を盗む者は
深緑野分著「この本を盗む者は」読了しました。
深緑野分さんの作品は今作が初めての作品だったのですが、ずっと読みたいと思っている「戦場のコックたち」は積読しております…汗
過去作には本屋大賞ノミネート作品や直木賞候補作品もある、今話題の作家です。
~感想~
久しぶりの長編ファンタジー作品ということもあり、最初は世界観に浸るのに苦労しました…。
しかし、中盤〜終盤にかけてはこの作品の世界観の虜になり、ページをめくる手がとまらなくなるほど没入してました!
本の街、本の館で本の蒐集家である曾祖父をもつ高校生の深冬は、本が好きではない。周囲からは本好きであると勝手に思われ、飽き飽きしています。
本の館である御倉館は、曾祖父一族以外立ち入り禁止!! そんな御倉館で蔵書されている本が何者かに盗まれ…。
本作は主人公・深冬がブックカースという呪いにより、あらゆる本の世界に閉じ込められる展開で進行していきます。
ブックカースの呪いを解く方法は一つ、本を盗んだ犯人を捕まえ、本を見つけること!!
各章ごとに、冒険小説の世界やハードボイルドの世界、銀の竜が出現する世界など本の世界へ入り込むのですが、現実世界の住人が本の中のキャラクターへと変化する描写は面白かったです。
深緑野分さんの作品は初めてだったので、独特の言い回しやファンタジー小説特有の表現が多く、読むのに苦労する人は多いだろうなと感じました。
正直、好き嫌いが分かれる作品だろうなと感じます。
全5章で構成されており、4章までは深冬が本の世界で冒険させられる話を軸に展開されていきます。最終章では4章までの謎や真実を知らされる内容となっており、伏線回収や結末への運び方が絶妙だと思いました。
~印象のある文章~
「それは、深冬ちゃんが゛今読むべき本に呼ばれた” んじゃないのかな」
このセリフは本の帯にも書かれているくらい、作品を象徴するものだと思います。
私も先日、購入する本を決めずに本屋へふらっと行ったのですが、あまり買わないジャンルの本がすごく気になり、購入しました。その時に、上記のセリフを思い出し、本に呼ばれるってこういうことかと実感してしまいました(笑)
この作品は皆さんにおすすめ!!っというよりも、ファンタジー小説に挑戦したいっという方におすすめしたい1冊です。
気になった方はぜひ読んでみてください!
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52ヘルツのクジラたち
町田そのこ著「52ヘルツのクジラたち」読了しました。
本屋大賞2021ノミネート作、2020読書メーター総合1位、王様のブランチBOOK大賞1位、ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR第4位と数々の賞を受賞しており、多くの人に読まれている作品です。
私自身、題名や表紙だけではどんな話か想像できず、今年の本屋大賞ノミネート作で1番どのような内容の本か分からない作品でした。
~こんな人に読んでほしい~
・暗い展開に抵抗感がない
・人と人との関わりが深い作品が好き
・孤独感に苛まれることがある
~感想~
最初、この作品を読んでいて抱いた印象は「展開が暗すぎる…。」でした。
孤独の中生きてきた主人公・喜湖と、虐待を受け、孤独に生きてきた少年の物語なのですが、生い立ちが凄まじく、10ページほど読んでは休息していました…(笑)
52ヘルツのクジラたちのキーワードは「孤独」だと思います。
52ヘルツのクジラとは、鳴き声の周波数が異常に高いクジラ。
ほかのクジラには52ヘルツの鳴き声が聞こえず、いくら呼びかけても仲間には声が聞こえない「世界で一番孤独なクジラ」だそうです…。
この52ヘルツのクジラを喜湖は自分自身と重ね、私自身の鳴き声を誰かに届いてほしいと願っていた過去があります。
自分の人生を家族に搾取されてきた喜湖は、虐待を受け喋ることができない少年と出会い、シンパシーを感じ匿うのですが…。
法的には許されず、仕事もしていない喜湖にはどうしようもできず。
施設へ引き渡すことも考えるが、その行動は少年の52ヘルツの声を聴いたことになるのか…。どうすれば少年のためになるのかを模索していきます。
この物語は喜湖の過去の話と少年をどうするかの話、2つの軸で構成されています。
話が進むにつれて、喜湖の過去が少しずつ明かされていくのですが、その明かされていくテンポがほどよく、暗い気持ちになりながらも引き込まれていきます。
暗い展開が続く中で、喜湖を助けてくれる温かい人たちの優しさ・思いやりが良い一層身に染みて感じることができます。
私も周囲の人々のように、52ヘルツの声に耳を傾け、手を差し伸べられる人になりたいと強く感じました。
~印象的な文章~
「どうしてそんな、刃のような言葉を振りかざせるのだ。その刃でひとは傷つき、血を流すことが分からないのか。」
このシーンは喜湖が、虐待を受けている少年の母親に会い、少年に対する暴言に感情を表す場面です。
本当に読んでいてムカつく母親で、少年に対する罵詈雑言に飽き飽きします。
しかし、この母親ほどの暴言は吐かないにしても、日常生活で知らない間に、刃のような言葉を振りかざしていないかとドキリっとしました…。
言葉によって、人をどれほどまでに傷つけてしまうのか考え直すことができた文章です。
本屋大賞ノミネート作6冊目に読んだのですが、どの作品とも違うテイストな内容だったと感じました。
今、話題筆頭の本作をぜひぜひ手に取って読んでみてください!!
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推し、燃ゆ
宇佐美りん著「推し、燃ゆ」読了しました。
この作品は2021年芥川賞受賞、本屋大賞2021ノミネート作と話題筆頭の作品です。
ショッキングピンクの表紙を本屋で初めて見たときは、派手なデザインで衝撃を受けました。
作者の宇佐美りんさんは現役大学生、過去作「かか」でも三島賞などいくつもの賞を獲得されています。
~こんな人に読んでほしい~
・推している人物や作品がある。
・文学的な表現が好き。
・本を読む時間があまりない。
~感想~
芥川賞受賞作は文学的表現が多く、難しいイメージを持っていたのですが、今作はすごく読みやすい作品だと感じました。
今作はリアルな会話が魅力の一つではないかと思います。最初の5ページほどで友人との会話が繰り広げられるのですが、その会話模様が学生時代の会話そのもので感嘆しました。さすが現役大学生…。
全体的にどんでん返しがあったり、急展開があったりはしないのですが、徐々に主人公が崩れていく様が描かれており、推しに依存しすぎる脆さ・儚さが切なく感じます。
特に家族との軋轢が徐々に深まっていく様子が印象的でした…。
全125ページで構成されており、読みやすいページ数というのも人気の理由だと思います。カバーを外すと全面的に推しのメンバーカラーである青色が使用されており、こだわりを感じます。
~印象的な文章~
何もしないでいることが何かをするよりつらいということが、あるのだと思う。
人は何かを「待っている」、目的地へ「移動している」という事実がある際、自分はちゃんと動いているという安堵感があると描写されています。
この文章を読んだ際、「もうその通り!!」っと心の中で昇華してくれました。
休日を部屋のベッドでゴロゴロと無駄に過ごした罪悪感を言語化してくれて、心のモヤっとしたのが少しスッキリしました。
芥川賞受賞の話題の本で、すごく読みやすい作品でした。
ぜひぜひ読んでみてください!!
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お探し物は図書室まで
青山美智子著「お探し物は図書室まで」読了しました。
舞台は小学校に隣接されているコミュニティハウス内の図書室。
仕事・将来に悩む利用者が司書の小町さんと出会い、悩みを解決していくお話です。
今作は本屋大賞2021ノミネート作、読書メーター読みたい本ランキング1位と話題の作品です。
青山美智子さんの作品は私自身、今作で初めて読んだのですが、代表作として
「木曜日にはココアを」「猫のお告げは樹の下で」があります。
~こんな人に読んでほしい~
・仕事や将来に漠然と悩んでいる
・胸の深いところで溶けていくようなメッセージが欲しい
・日々の生活に少し疲れている
全5章の連作短編小説で、各章ごとに20代~60代の年齢・性別が異なる主人公が登場します。
そのため、各章ごとの登場人物と読み手自身を照らし合わせながら、読み進めていくことができます。
~感想~
「…何をお探し?」
司書・小町さゆりは図書室のレファレンスコーナーに来る利用者に問います。
小町さゆりの問いに、登場人物たちは本ではなく、「自分は何ができるのか」「仕事の目的」「もてあました夢の置き場」「これからの生きる道」etc…。
心の中で悩みを打ち上げながら、小町さんに欲しい本を依頼。
そんな利用者たちに一見、関係なさそうな内容の選書リストを手渡し、その本から悩みを解決するきっかけを与えてくれる展開で進行していきます。
全章通して、仕事や将来に不安を感じている年代には心に刺さる内容となっています。
2章は漠然と夢を持っているが、叶えることを自分にはできないと決めつけており、「いつか叶える…」で終わっている男性の話。
その話の1節で小町さんは男性に助言します。
「いつかって言っている間は、夢は終わらないよ。美しい夢のまま、ずっと続く。かなわなくても、それもひとつの生き方だと私は思うー」
このセリフを読んだ時は、夢の持ち方は叶えるためだけではなく、自分の胸の中で抱き続けるのも一つの夢の形なのだと知ることができました。
今作は、仕事に悩んでいる方には心にグサリと刺さる描写が多く盛り込まれています。
私も仕事・将来に関して悩んでいることが多いのですが、この本を読んで目の前のことに前向きにとらえられる気持ちになり、困ったときの御守り代わりの1冊となりました。
~印象的な文章~
「どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ」
3章での小町さんのセリフから抜粋、
この文章を読んで、なんて素敵な解釈なんだ…っと心から思いました。
今まで、本は著者が素敵な文章を提供してくれている一方的なものだと思っていました。
しかし、この文章を通して、本を読む真髄はここにあるんだろうな…。と感じました。
本屋大賞ノミネート作品らしく、本にまつわる話かつ心温まる小説でした。
きっと本屋大賞ノミネート作でなければ手に取ることがなかったので、素敵な本と出会えてよかったと感じる1冊です。
ぜひ手に取って読んでみてください!
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犬がいた季節
伊吹有喜著「犬がいた季節」読了しました。
本屋大賞2021ノミネート作の中で個人的に一番気になっていた作品です。
私の好きな青春小説ということもあり、期待していたのですが期待を大幅に上回る作品でした。
~あらすじ~
この作品は全6章で構成されており、1~5章は各年代(昭和63年度~平成11年度)の高校3年生の物語、6章は同窓会の話で構成されています。
高校で飼育されている犬・コーシローが、各年代の高校生に寄り添いながら物語が進んでいきます。
最後の共通1次試験、鈴鹿でのF1ドライバー・アイルトンセナの激走、阪神淡路大震災・地下鉄サリン事件、ノストラダムスの大予言といった、各年代の時事ネタをふんだんに盛り込まれており、この時代はこんな風に生活していたんだな…と想像しやすく読み進めることができます。
~こんな人に読んでほしい~
・青春小説が好き
・背中をそっと押してくれるメッセージがほしい
・温かい気持ちになる読後感を味わいたい
~感想~
今回初めて、伊吹有喜さんの作品を読んだのですが、 1章を読み終え「この作者さん・作品好き…!」っとなりました(笑)
コーシロー目線での語りが各章で展開されるのですが、犬目線での話をなぜ、あんなに優しい文章で表現できるのでしょうか…。
今作のキーワードは「18歳の青春」だと思います。
高校生活3年間は、短くも濃い時間を過ごすことになります。
コーシローは子供と大人の狭間で3年間を過ごす生徒たちを見守り・見送っていく…。
各章ごとにコーシローが見送る設定が、儚くも尊いなと感じました。
前述したように全6章中、5章分の高校生たちの物語があるのですが、私は1章の物語が一番好みでした。
あと少しの頑張りができない女子高生・塩見優花と美大志望のクールな早瀬光司郎の甘酸っぱく、もどかしい物語に心がキュッとなります。
また、優花の「何物でもない自分に絶望するのが嫌だ」、「飛び抜けて優秀ではないが、まったくできないわけではない」というように自分に自信がなく、挑戦をしない性格が私自身の高校時代と重なりました…。
他の章でも友情・家族・アイデンティティなどの悩みにもがきながらも、青春を謳歌する話がふんだんに盛り込まれています。
コーシローと高校生たちの優しい物語、ぜひ手に取って読んでいただきたいです!
~印象的な文章~
見えていたものが見えなくなるとき。それは新しいものが目に映るときー。
コーシローが卒業していく高校生を見送る際に出てくる文章です。
高校時代の生活に別れを告げ、ひとつ大人になり卒業していく高校生たちを表現しており、私は見えているものが見えなくなることは否定的なことだと思っていました。
しかし、この文章を読んで見えていたものが見えなくなることは、次へと目を向けている過程なのだと感じました。
今作はハードカバーの本なのですが、読了後にぜひカバーを外して表紙を見ていただきたいです。この本はハードカバーでないとダメな理由がわかり、感動すること間違えなしです!
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