滅びの前のシャングリラ
凪良ゆう著「滅びの前のシャングリラ」読了しました。
凪良ゆうさんは、「流浪の月」で昨年の本屋大賞2020グランプリを受賞した、話題の作家です。「流浪の月」の書評は以前に記事にしたのでぜひご覧ください。
今回、本屋大賞2020を受賞した後の1作目の作品であり、本屋大賞2021にノミネートされたということで、さっそく読んでみました。
~こんな人に読んでほしい~
・コンプレックスや悩み、自分自身に卑屈な部分を持っていると感じている。
・今、つらいことや悩んでいることがある。
・綺麗ごとではなく、人間の本質的なリアリティーのある感情描写が好き
~感想~
-1か月後、小惑星が地球に衝突し、地球は滅びます-
そう宣告された日本を中心に物語は進行していきます。
1章は17歳の江那友樹、2章は40歳の目力信士、3章は40歳の静香、4章は29歳の山田路子の視点で、全4章のオムニバス形式で描かれています。
この小説のテーマは「生きる理由」だと個人的に思います。
-江那友樹、十七歳、クラスメイトを殺した。-
この文章から始まるのですが、展開が重たい雰囲気で進んでいくのか?と感じました。
しかし、ストーリー全体を通して「生きる理由」を見出していく4人の描写に読む手が止まらなかったです。
凪良ゆうさんの作品を読むのは2作目なのですが、
善と悪の天秤が程よく釣り合っていて、残酷すぎず・綺麗ごとでもない塩梅が、
心地よいさじ加減で描く方だと思います。
惑星が衝突するまでの日本全体の描写は、読み進めていくごとにだんだんと暗くなっていきます。
殺人、放火、強奪、強姦が当たり前になっていき…。
最初は残酷に感じていたのですが、物語の登場人物がこの状況に慣れていくにつれ、読み手の私もこの状況に慣れて読んでしまっている部分があり、人の慣れとは怖いものだと感じました。
~印象的な文章~
-明日死ぬとわかっていたら勇気がだせるのに、と思ったことがある。けれど小惑星が衝突しようと、人類が滅亡しようと、ぼくはどこまでもぼくなのだった。-
この文章は第1章の主人公である、いじめられっ子の友樹が勇気を出せなかったときの描写です。
人類滅亡や死亡するなど環境の変化が生じても、人間の本質は急に変化させることができない、結局自分自身が決断するしかないと感じる場面でした。
凪良ゆうさんの作品は、何を書いてもネタバレになってしまいそうで書評が難しいです…(笑)
残酷ながらも、決して暗すぎない展開が癖になる作品なので、ぜひ手に取ってみてください!!
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