お探し物は図書室まで
青山美智子著「お探し物は図書室まで」読了しました。
舞台は小学校に隣接されているコミュニティハウス内の図書室。
仕事・将来に悩む利用者が司書の小町さんと出会い、悩みを解決していくお話です。
今作は本屋大賞2021ノミネート作、読書メーター読みたい本ランキング1位と話題の作品です。
青山美智子さんの作品は私自身、今作で初めて読んだのですが、代表作として
「木曜日にはココアを」「猫のお告げは樹の下で」があります。
~こんな人に読んでほしい~
・仕事や将来に漠然と悩んでいる
・胸の深いところで溶けていくようなメッセージが欲しい
・日々の生活に少し疲れている
全5章の連作短編小説で、各章ごとに20代~60代の年齢・性別が異なる主人公が登場します。
そのため、各章ごとの登場人物と読み手自身を照らし合わせながら、読み進めていくことができます。
~感想~
「…何をお探し?」
司書・小町さゆりは図書室のレファレンスコーナーに来る利用者に問います。
小町さゆりの問いに、登場人物たちは本ではなく、「自分は何ができるのか」「仕事の目的」「もてあました夢の置き場」「これからの生きる道」etc…。
心の中で悩みを打ち上げながら、小町さんに欲しい本を依頼。
そんな利用者たちに一見、関係なさそうな内容の選書リストを手渡し、その本から悩みを解決するきっかけを与えてくれる展開で進行していきます。
全章通して、仕事や将来に不安を感じている年代には心に刺さる内容となっています。
2章は漠然と夢を持っているが、叶えることを自分にはできないと決めつけており、「いつか叶える…」で終わっている男性の話。
その話の1節で小町さんは男性に助言します。
「いつかって言っている間は、夢は終わらないよ。美しい夢のまま、ずっと続く。かなわなくても、それもひとつの生き方だと私は思うー」
このセリフを読んだ時は、夢の持ち方は叶えるためだけではなく、自分の胸の中で抱き続けるのも一つの夢の形なのだと知ることができました。
今作は、仕事に悩んでいる方には心にグサリと刺さる描写が多く盛り込まれています。
私も仕事・将来に関して悩んでいることが多いのですが、この本を読んで目の前のことに前向きにとらえられる気持ちになり、困ったときの御守り代わりの1冊となりました。
~印象的な文章~
「どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ」
3章での小町さんのセリフから抜粋、
この文章を読んで、なんて素敵な解釈なんだ…っと心から思いました。
今まで、本は著者が素敵な文章を提供してくれている一方的なものだと思っていました。
しかし、この文章を通して、本を読む真髄はここにあるんだろうな…。と感じました。
本屋大賞ノミネート作品らしく、本にまつわる話かつ心温まる小説でした。
きっと本屋大賞ノミネート作でなければ手に取ることがなかったので、素敵な本と出会えてよかったと感じる1冊です。
ぜひ手に取って読んでみてください!
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