オルタネート
加藤シゲアキ著 「オルタネート」 読了しました。
著者の加藤シゲアキさんはアイドルグループNEWSのメンバー。
アイドル活動をしながら今作を執筆し、直木賞候補、本屋大賞2021ノミネート作ということもあり、話題筆頭です。
~こんな人に読んでほしい~
・青春小説好き
・ドキドキな展開ではなく、リアルな人間感情を描いた作品が好き
・小説でしか味わえない表現を楽しみたい
~あらすじ~
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が普及された現代。
東京のとある高校を舞台に、デジタルな世界と若者特有の感情が織りなす物語の待ち受ける未来とはー
過去の料理コンテストの出場によりトラウマを抱えている蓉(いるる)
母親の影響により、〈真実の愛〉を求めオルタネート信者の凪津(なづ)
高校を中退し、かつての旧友との再会を求め東京へ来た尚志(なおし)
「オルタネート」は3名を中心に物語が進行していきます。
全24章で構成されており、1章ごとに蓉・凪津・尚志の話が順番に回っていくので、さくさくと読み進めることができます。
~感想~
今作の個人的ポイントは「悩み」だと思います。
高校生特有の甘酸っぱい恋愛の悩み、親との関係にモヤモヤする悩み、自分の将来に漠然と不安になる悩み、孤独についての悩み…。
主人公たちは三者三様の悩みを持ちながら話が進行していきます。
今作は「オルタネート」という高校生限定のマッチングアプリが出てきており、遺伝子レベルでのマッチングができる設定です。
しかし、いい意味でアプリ「オルタネート」が作中に誇張されておらず、
近未来的な要素を含みつつも、人間らしい感情が多く散りばめられており、個人的にいい味を出しているなと感じています。
特に、凪津と生物の先生である笹川先生の会話は、印象に残るシーンです。
「オルタネート」信者の凪津が遺伝子マッチングに関して、笹川先生へ質問するシーンで、笹川先生は「相性はいい子孫を残すためのものではない」という意見を述べます。
しかし、凪津は「私はそれが生物として正しいのなら、いいと思ってます。逆に外見で好きになったりするほうが、とても曖昧で、危険だと思ってます」と答えます。
一般的には人間的な感情を重視する、笹川先生の意見に賛成することが多いと思いますが、凪津の意見にも反対できない自分がいて、どちらが正解なのか悩みながら読み進めていました。
~印象的なセリフ~
「やめないよ、だって好きだもん。それでやめたらさ、俺の好きな気持ち、人に盗られたことになるじゃん。俺の好きは自分で守るし、誰にだって奪えない」
これは主人公の一人、蓉と前回の料理コンテスト優勝者、三浦君との会話で出てくる文です。
三浦君は、男性ということもあり料理が好きなことや、おままごとが得意なことに小さい頃、男のくせに といじめられることが多いと述べています。
それに蓉がなぜやめなかったのかを問うと、三浦君は上の文章で答えます。
三浦君のこのセリフに読了した人は、心にグサッときたのではないでしょうか?
私自身、小さい頃から周囲の評判や視線を気にしてきた性格なので、この文章に感銘を受けました…。
20代半ばの私は、このように胸が張れるような好きな気持ちを何か一つでも持っているのか…。と自分自身に投げかれた課題だと感じました。
今作の「オルタネート」は本でしか表現できないような、抽象的な表現がたくさん出てくるので、本を読む楽しさがストレートに感じる作品だなと感じました。
特に後半につれ、話が急速に進んでいき読む手が止まらなくなります!
ぜひぜひ読んでみてください。
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