「神様のカルテ」
夏川草介著「神様のカルテ」 1/24 読了しました。
この作品は、約10年前くらいに櫻井翔さん主演で映画化された作品なのですが、当時は嵐が大好きな中学生だったので、「へぇー翔ちゃん主演おめでとう」くらいしか思っていませんでした…。
今年の2月に福士蒼汰さん主演でドラマ化されることもあり、文庫本コーナーで平積みにされているのを発見し、購入したのですが…。
なぜもっと早くこの作品を手に取らなかったんだ!!っという気持ちでいっぱいです。
夏川草介さんは医師として働きながら、この「神様のカルテ」で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビューしたそうです。
働くというだけでも大変なのに、小説を執筆し、デビューまでしてしまうなんて尊敬しますね…。
~こんな人に読んでほしい~
・心温まる医療系の物語が好き
・登場人物が特徴的であり、緩やかな時間が流れる物語が好き
・心温まるジャンルをよく読む
~あらすじ~
主人公・栗原一止は信州にある市民病院で働く内科医師。この病院は24時間、365日対応を掲げているが慢性的な医師不足である。
そんな一止に信州大学医局から誘いの声がかかる。大学病院では最先端医療や技術を学ぶことができる…。しかし、目の前の患者の声に耳を傾け、患者のために働く医師でありたい…。
このような葛藤を抱えながら、患者や周囲の人との関わりで成長していく、ヒューマンドラマである。
~感想~
「なんて心が浄化される話なんだ…」 これが読後にまず感じた感情でした。
全3話で構成されており、どの話も主人公の一止目線で話が展開されていきます。
一止は夏目漱石の影響で、古風な話し方をしています。
そのため、読み始めは難しい言葉がたくさん出現し、抵抗感があるのですが数ページ読むと気にならなくなり、話に没入することができました。
主軸は一止が市民病院に居続けるか、大学病院の医局へ行くかの話で進行していきます。
その主軸の問題を抱えながら、一止が住んでいる「御嶽荘」の住人や病院スタッフ、患者との関わりを深く描したストーリーです。
特に御嶽荘のキャラクターとの関係は家族でも友人でもない、夢に向かって進んでいる"戦友"のような関係で羨ましく思いました。
この作品の特徴として、登場人物によく一止はあだ名をつけています。
病院の部長は太った腹をさすりながら豪快な笑い声をあげるため大狸先生、
副部長は四六時中顔色が悪く、ヒョロヒョロっとしているため大狸先生とは対照的に古狐先生。
他にも男爵や学士殿など、登場人物の特徴をあだ名で表現されており、キャラクターの特徴が全面に出ていて非常に読みやすかったです。
次の文章は私が今作で最も印象的だったものです。
ー足元の宝に気づきもせず遠く遠くを眺めやり、前へ前へとすすむことだけが正しいことだと吹聴されるような世の中に、いつのまになったのであろう。-
このフレーズを読んだとき、未来のことも大切ではあるが、今当たり前のようにあるものを見失わず、生きることも同等に大切であるなと強く感じました。
ここでは語れないほど、たくさんの人間ドラマがこの1冊で凝縮されています。
心を温かくしたい方や気になった方はぜひ手に取ってみてください!
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