八月の銀の雪
皆さんこんにちは!
伊与原新著「八月の銀の雪」読了しました。
今作は直木賞ノミネート、本屋大賞2021 第6位になった作品
作者の伊与原新さんは地球惑星科学を専攻し、博士課程を修了した方なので理系よりな内容の作品が多い印象です。
~こんな人に読んでほしい~
・自然×科学的な話には抵抗がある
・切ない部分もあるが、温かい話を読みたい
・いろんな知識を吸収したい
~感想~
今作は全5篇からなる短編小説。
外国人留学生と就活に失敗している理系大学生、子育てに悩むシングルマザー、物件の立ち退きを忠告する仲介会社の社員など、生活背景が異なる主人公が登場してきます。
この物語を通して、私は地球や自然について、全く知らずに生活しているなと痛感させられました。
例えば、よくマットなどに使用されている珪藻土。
珪藻は、ガラスの殻が2つ合わさる形状で出来ていて、その中に細胞が入っている微生物であり、生き物だそうです。
この珪藻を通して、第4章の「玻璃を拾う」では、珪藻アートを作る偏屈な男性と失恋した女性との出会いの話が繰り広げられます。
珪藻が生き物という発想が私には全くなかったので、珪藻についての説明を読んだときはびっくりしました。
今作を読むにあたり、理系の本!!というだけで、取っつきにくいイメージがありました…。
しかし、「八月の銀の雪」では普段知ることができない情報を物語にして伝えてくれるので、内容がすごく分かりやすかったです。
表題作である第1章の「八月の銀の雪」も、もちろん面白いのですが、私個人的には第5章「十万年の西風」がお気に入りです。
「十万年の西風」は原発の下請け会社を辞めた男性が主人公。
東北大震災が生じ、原子力発電の危うさ・会社内の黒い部分に嫌気がさし、地方の原発下請け会社を辞職。
福島の原子力発電所を訪れようと一人旅をしていた際に、凧を上げている気象予報士の男性と出会います。
この章の話では原子力発電、偏西風、戦争中に使用された風船爆弾など…。
私自身あまり知ろうとしなかった情報を物語を通して教えてくれ、科学の力は戦争や兵器の発展と繋がっているものだと強く感じました。
全体的に切なくも温かい話が多く、自然・科学の物語を通して疲れた心に沁みていく感覚があります。
~印象的な文章~
「無知なのはまだいい。だがそれを認めることができないのは、無知を通り越して愚かだ」
このセリフは、先述した第4章「玻璃を拾う」で出てくるものです。
この文章は心に刺さりますね…。
社会にでて、知らないことを認めるって経験を得るごとに難しくなっていくように感じます。
私自身、20代半ばと年齢を重ねていってますが、知らないことを目の前にしたとき、無知であることを認めることができるか…。
無知であることを認め、そこから吸収できるような品減でいたいと思います。
今回紹介した章以外も自然×科学の話を織り交ぜながら、温かく魅力的な話がたくさんありました。
ぜひぜひ読んでみてください!